コ・ワ・レ・タ 自分の中の何かが告げた。 そう、あの時から俺は壊れている。あの時から…… * 「西田君、書類は出来たかね」 自分に向けられた声に、振り返る。 「書類……ですかぁ?」 俺はチーフに尋ね返している。尋ね返しながら書類のことを思い 返す。そういえばそのような物もあったような記憶がある。 「……例の書類なんだがね」 むろん出来ているはずなど無い。チーフもそれを期待してはいな い。 「そぉいえば。そのよぉな物も。ありましたねぇ」 自分の心に偽らない返事。吹利県警は、しょーもない書類のため に俺に手帳を渡しているわけではない。 「一応、規則だから。出しといてくれたまえ」 チーフの目を見つめる。 自分の。目の前で組んだ両手の関節が微妙に安定点を求めて蠢く のが昆虫の脚のようで。 そして机には書類が置かれる。その書類に早苗美と名前を付けて みる。 早苗美君が語りかけてくるのに耳を傾ける。彼女が呟いているの は、失った恋の繰り言。俺は、クスリと笑う。 失った者。失った物。失った喪の………… 俺はもう壊れている。だから、何をしたところで世界は変わりは しない。ゆえに、この世ならざる者の方が、俺には心地よい。 書類の文字が、指先の汗で、滲む。ぬるりと。 (fin)
吹利県警捜査零課の、とある日常。
西田七緒の内面の壊れっぷりが出ています。
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